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お墓の話3

 お墓の話 3



「納骨」

 また当時流行のカロートですが、これはよろしくないと言う事を前にも申して置きましたが、このカロートが一杯になって、新たに造らなけれぱならないと書う例がほとんどありませぬ。そのカロートが一杯にならない前にその家は終わっております。やはり人は亡くなったら土に帰るべきものでありますから火葬にしても良いから遺骨は木の箱に入れて三尺の地下に埋葬するのが一番理想的であります。

「奇形」

 それからお墓を沢山調べておりますと、石碑の形が色々変っているのを見受けます。三角の尖ったものとか、将籔の駒形のもの、あるいは丸い太鼓のものなどがあります。こんな変形、奇形の墓は絶家します。また石碑に色々は事を書いたのがあります。歌を書いたり詩を書いたり、あるいはお寺に祠堂金を納めたと言う様な事を書いたのがあります。これらもよろしくありません。金の事を書いた墓の家は負債が出来るものです。これで面白い話がある。
 先年大阪の寺町にある法華宗の寺でありますが、そのところで朝からお話をして三、四時間で終わりましたが、ただ話したばかりでは皆様にお分かりにくいだろうから墓を見て、この家は繁盛している、この家は病気で若死するとか、実地について申し上げましょうと言って、墓地に降りて、これはとうだ、ここはこうだと話して行く間に色んな墓がありました。正面に先祖代々之墓と書いて、後面には金五百円也何々と細かい字が一杯に書いてあるから、これは誰方の墓だと言ったら「私の墓です」と言う人がありました。この御影石はキラキラして読みにくいから、細かい字を私が読むよりあなたが読んで聞かせて下さいと申してそばで聞いておりますと「この墓を建てた記念として寺に五百円上げたが、この金は五十年間は使ってくれるな、これを五十年利殖すると八干円になる、その時半分寺にくれて残りの四千円をまた五十年便わずに置く。そうすると三万なんぼになる。その時半分の一万五千円をくれて残りをまた五十年使わずに置く、かくすると何百年後には何千何百万円となる」と言う事です。私はそれを聞いてあなたは偉いなあ、あなたのソロバンではこの墓一本で世界中の金を集める事になる。まあそんなもんです、とその人が答えました。あなたは大変偉い、しかしあなたは大事な事を忘れている。ソロバンの上ではそうなるがそれはあなたの理想通りに都合良く行った時の話だ。一体その金を誰が殖やしてくれるか、金庫の中に入れて置いては殖えないから預けるとか何とかして元金を働かさなければならぬが、五百円が幾数十年また何百年と言うその間、確実に維持されて殖やすと言う事を誰がしてくれるか。一つの国と言うものを考えても、ようやく日本だけが皇統連綿として二千何百年続いているが、外の国々では相当続いた国も何十年何百年の内に滅びている。最近の経験によれぱ、この銀行が大丈夫なりとして金を預けて今日ただ今は安心の出来る大銀行であるかも知れませぬが、年数のたって十年二十年の間に変化しているのではないか。日本に銀行が出来て五十年程であるが,この間にいくつ銀行が損れたか知れぬ。華族の資本によって建てられた大銀行でも、先年漬れて名だけ残っていると言う有様だ。どこに確実な銀行があると言える。人に貸せぼ倒される。しまって置けば殖えない。どうしてあなたの計算した様に理想通りに殖えるか、そこにあなたの誤算がある。私はあなたに苦言を呈する、あなたがここに寄付した金が最初五十年で八千何百円、あなたの年齢は六十にもなっつている。十年前にこの墓が建ったものとしてもあなたが百歳まで生きなければこの金は見られない。あなたは百二十まで生きるか分からぬが、それまでにあなたが借金で終わらない様にお気を付けなさいと言った。
 引き続き希望者が多くてその日で中止するのも本意でないので、明日半日だけ皆様のご希望にそう事にすると言って、その翌日もその墓地を見ました。皆済んでしまってから昨日の五百円の方が残っておりますので、何か御用かと聞きますと「もう一度私の墓地へ来て頂きたい。早くから来て待っておったがあまりきまりが悪いから控えておりました。皆がいなくなったからお聞き申したい」と言ってその人の墓の前へ行きますと「先生のご指導通り墓を直しますからどうか教えて頂きたい。誠にお恥ずかしい次第であるが、私は鉄の卸売りをしており、以前は三文の借金もなかっつたのに、この墓を建ててから十年になり、目下銀行に○○万円の借金が出来ました。そしてその利子の支払にも困る様な有様で、昨日のお話を伺って後悔しております。この際お墓を直したいと思いますから、なにとぞご指導を願う」との事でありました。墓にお金の事などを書くとその家は潰れるか、負債が出来て来るものであります。

「同居墓」

 一つの墓地内に本家と分家とか、または他人とか、いずれにしても二軒の家の墓がありますと、その両家盛衰交互に至って、片方が頭を上げると片方は衰える。これを繰り返して遂には共潰れになる。もし三軒以上の家の墓がありますと争いが絶えませぬ。そうして親子でも兄弟でも口を利かない様になります。
 自分の墓地内へ他人の墓を建てると、たとえ親切でした事でも、その家に厄介が絶えない事になる。よく田舎から都会に出た人がその所でお嫁さんをもらい、出来た子が死んだとか言う場合に、田舎の寺へ遺骨を持って行くのは遠いから嫁さんの里の墓地に葬って置く事がある。その墓に埋められた家が厄介の絶えない事になる。分家が本家に墓を置けば、その分家はいつまでも独立が出来なくて、いくら本家から貢いでもらつても失敗すると言う有様で、どうしても独立出来ない原因が家に起こって来る。家が別なれば墓もまた別の所に造らなければならぬ。
 墓一本のために長年お子さんが無かった家にお子さんが出来た例、長年病人が床に就いておった者が治った例。大変不如意であった家が如意となって都合良くなった例も、沢山持っております。その内一つ二つ例を挙げてお話致しましょう。
 この頃熱海の方へ行く途中、東海道の平塚と言う駅で汽車を降りて墓を見た事がある。その家の墓を見ている中に、あなたの墓地の中によその墓が一基ありますぞと申しますと「良く分かりますな」とその人が言いました。有れば分かるに決っていると私が申しますと、その人は「恐ろしいものですな」と言っておりました。このよその墓は何人だか知らんがあなたの墓地の中に置くとあなたの家に厄介が絶えないそ、過去帳を見せて下さいと言って、それを見ますと、それは女の墓で、蓮池貞芳信女とある。この仏はその家に長女として生まれて嫁に行って亡くなった。実家では自分の娘が死んでかわいそうだと言って、その家の墓地内に立派な墓を建てたものだと言う事が分かりました。どうもよそへ行った者の墓を自家の墓地内へ建てると、将来この家の娘が嫁に行っても出戻りして家の厄介になる事になる。たとえ自分の家に生まれたものでも、他家に行ったらよその人である。その人を供養してやるのは良いが、こうやって自分の墓地に置けばただ普通の厄介では済まない。娘が幾度お嫁に行っても出戻りすると言う事になって気の参な事になると言った。その時主人が「ここにいるのが出戻り娘です」と七十三になるお婆さんを指しました。
 このお婆さんはこの家の長女でしたが、よそに嫁に行ってその先が潰れて、戻って来た。後にまた嫁に行ったが、その所もまた漬れて戻って来た。そして嫁入先の仏檀まで持って帰って、大変いばりちらし、召し使いの者まで酷使する、と言う有様で困っているのであると言う事でした。その家はこの婆さんの弟が相続しましたが亡くなりましたので、その妹に養子をもらったのが今の主人で、七十一歳になると申しました。こんな墓を置くと、娘さんが出戻りするの当たり前で、この婆さんが悪いのではない、悪因縁の犠牲となったのです。何とか墓の始末をしない内は治らない。しかのみならず、あなたの家はだいぶ穴が空いているぞと申しました。後に分かつた事ですが、相続人が親や妻や親族も知らない大変な借銭をこしらえていたと言う事である。そう言う事が墓に良く現れるのであります。
 墓は石でありませぬ。あなたがたの親であり先祖であり人であり仏である。それを世間一般に石とばかり考えているから誤った扱いをしている。


先祖の祭祀と家庭運」 松崎整道先生講話 お墓の話 より 

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 墓相Wiki 最終更新時間:2011年08月12日 11時16分20秒